時間を潰すため、車内は暇だったから、園内の室内遊技場で絵本を読んだことがあった。
絵本の本棚は遊技場の南の隅にあって、そこで小さな白い椅子に肘をかけて床に座り、
「ぐりとぐら」とか五味太郎の本や「葉っぱのフレディ」(!)を片っ端から読んだ。
で、棚の向こうの遊技場の真ん中に男の子が一人だけいて、積み木遊びをしているのが見えた。
男の子は積み木を部屋の中央に集め、そこで城だか砦だか山だかを築いているように見えた。
面白いことに、積み木を積み上げるため、作品の周りをせっかちにクルクルと移動していて、
例えば東側の屋根に三角を乗せ、西に回り円柱を差し込み、北側で壁を増築したりしていた。
子供の積み木遊びって普通は座ったままされることが多い。その視点はほぼ固定されている。
彼のように作品の裏側に回って積み上げる、みたいなことは大人でもあまりしない気がして、
見れば見るほど不思議なことをやってるな、どういう欲望なんだろう、という気になってくる。
積み木の量が多いから作品はどんどん大きくなる。やがて裏側に回った彼の体が見えなくなる。
男の子は顔だけ出して黙々と積み木を積み上げるけど、無理して高くする気はないらしくて、
相変わらずクルクルと周囲を回りながら、今度はその裾野を広げて、また積み上げていく。
ときどき彼の袖やつま先が当たったり、彼の走る振動で、不安定な箇所が勝手に崩れたりして、
しばしばガラガラと音を立てるものだから、棚の奥から見てるこっちはハッとするんだけど、
ある程度大きくなると崩れてもどうでもいいというか、作品が駄目になった感じがしないのか、
チョコチョコっと補修すると、男の子はさっさと裏側へと回ってまた何やらを積み上げる。
補修と言っても、散乱したのを集めて、崩れた箇所にまた無造作に積み上げるくらいのもので、
完成しているのか半壊しているのかよくわからない、小さな建造物ができあがっていく。
時間が経つにつれて、何かスゴいものを見てる気がしてきたんだけど、
彼の母親がやってきて帰ると言うと、彼はあっさりと仕事をやめて、片付けをし始めた。
片付けも積み木を4、5個だけ持ってダンボールの大きな箱に入れることを繰り返すので、
この子は積み上げるのが好きなストイックな子なのかと思ったが、実際のところは知らない。
結局、何を作っていたのか作者の口からは聞けなかった。母親に見て欲しいと思ったとき、
あの子は母親を作品のどの方角に誘導しただろうか。建築はどこから見るのが正しいのだろう。
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