2009年08月01日

『高校球児ザワさん』

『高校球児ザワさん』(三島衛里子 小学館)
09182537zawa.jpg


男だらけの野球部に女が一人でいたら周りの人はどう思うか、って話。
スポ根や部活動漫画というより、周囲の反応を記した観察記録みたいな漫画で、
主人公の「ザワさん」自体は、見られて反応される対象として描かれている。
チームメイトやクラスメイト、観客など、周りの人間のリアクションがメインで、
観察記録とはザワさんの記録ではなく、周囲の人間の、反応パターンの記録だ。


予想できる通り、ザワさんに接した人間のリアクションは、半分くらいがエロい。
「男だらけの体育会系部活動に女が一人」なんてエロ漫画のテンプレもいいとこだ。
「目隠ししてプロテイン」とか、もっと身も蓋も無いエロゲ的な描写もあるけれど、
もう半分はエロくなくて、キチンと部活動や青春を送っている描写もあったりする。


恐らく、現代人がザワさん的な相手に見せるリアクションのパターンはそれほど多くない。
作者の想像力は十人十色のリアクションを思いつくだろうが、その想像力の限界が、
すなわち現代人の想像力、ザワさんを前にしたときの想像力の限界ですらあると思う。
2巻にして既にエロい話が目立つのは、作者のマンネリなどでは決してなくて、
それがザワさん的なモノに接した際の、一般的な現代人の発想のテンプレだからだ。
そして一般的な反応だからこそ、そのテンプレは繰り返し描かなければならない。
描かなければ逆に嘘になる。チームメイトの猥談や困惑や妄想は特にそうだろう。

これが例えばマリナーズのイチローのニュースを見聞きした人々の反応なら、
漫画家はどの程度のパターンを想像して話数とすることができるだろうか。
それは何を考えることができるか、何を真っ先に考えてしまうかのテストでもある。
問われているのはステレオタイプと、そこからズレる現代の想像力に違いないし、
大仰なことを言えば、そこから生じた成果は、現代を映す鏡ですらあるだろう。
一人の作家が脳髄を振り絞って考え出した様々な反応のパターン数は、
現代人の反応パターンをほとんど網羅すると思うのだけど、どうだろうか。
posted by 手の鳴る方へ at 01:37| Comment(0) | 批評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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