2009年08月10日

ファッションの語る言葉

メンズナックルキャッチコピーまとめ


「メンズナックル」と言えば――いまさら解説も紹介も不要に違いないけれども――、
ガイアが俺にもっと輝けと囁いたり、鳥人拳だったり、マッド・ロックの伝道師だったり、
孔雀は堕天使の象徴だったり、伊達ワルだったりで、とても有名な男性ファッション雑誌。
「俺たちゃ無敵のXYZ」だとか、「ある意味、俺がホスト界のスペードのエース」だとか、
わかりそうで、でもよく考えればやっぱり意味がわからないキャッチコピーが大好きです。

この類の、後発のニッチ狙いの雑誌は、手探りで独自の文化を築き上げなければいけません。
もっと細かく言えば、扱うファッションを言語化し、ボキャブラリーを練る必要があります。
個性のマス・プロダクトを築くためには、モデルやブランドと同じくらい言葉が大事なのです。


ちなみに、普通の先行しているファッション誌なら、その煽り文は極限まで洗練化されており、
材質や形状、色、柄、ブランド、状況、ステータス等々、語彙も一般的なものが占めています。
彼らは奇を衒う必要も無いし、変に自分自身を意識することもない位置で仕事をしています。
正統派のフォーマルなファッションなら、それを語る言葉も正統派で一向に構わないからです。
例えば(手許にどういうワケか女性誌しか見つからないので)女性誌の煽り文を例にとれば、


ミリタリーショーパンはざっくり
ニットとアースカラーのグラデが命

リゾート風サンドレスは
+ベストでタウンユースに変身

夏の大人カジュアルは
クラシカル女優がお手本



と言った具合に、見事な様式美、機能的な美文を見せてくれます。役目を全うしてる感じです。
この傾向は「小悪魔ageha」や「POPTEEN」等、フランクな雑誌でもあまり変わりがありません。
文章は確かにざっくばらんで馴れ馴れしい感じにはなりますが、言葉の使い方は同じです。
女性誌に話が移行してますが、例えばこれが「Gothic & Lolita Bible」ならどうでしょう。
その名の通りゴスロリのファッション雑誌です。煽り文を幾つか引用してみましょう。


茨の森で待ち構えているのは、リスの国の女王様。
「この森を無事に抜けたいのなら、
岩トカゲのしっぽと、雪うさぎの前歯、
上質なドングリを帽子いっぱいに集めてきなさい。
かわりに、この森の出口の地図をあげましょう」

ゴキゲンな日には、
黒猫みたいに
タンゴを踊るの♪
お気に入りの服は、
上手に踊れる魔法の道具の1つなの☆

しかし悲しいことがひとつ。
薔薇少女達は
たくさんの薔薇を食べなければ
動くことが出来ません。



どう見てもポエムです。そもそも、誌面の作り方からして煽り文であるよりはポエムなのです。
本来なら煽り文が入る場所に、連作ポエムがデカデカと挿入される誌面構成となっているのです。
一番目のヤツなんかは、ウサギの前歯を所望するあたりに残酷な童話の世界が垣間見れますね。
きっとリスvsウサギで、クイーンオブメルヘンアニマルの座を争っているに違いありません。
ちなみに「Gothic & Lolita Bible」の中身が全部こんな感じというワケではありませんし、
ゴスロリ誌一般がこんな感じってワケでもありません。ポエムは他の雑誌でも見受けられます。

で、ご覧の通り、「Gothic & Lolita Bible」にはイメージ先行の煽り文が多用されています。
そのイメージとは、キーワードを挙げれば「童話」「西洋」「ウィッチクラフト」等でしょう。
「メンズナックル」と同じように、イメージが先走りすぎて意味不明だったりもしますが、
このようなゴスロリ誌の言葉や誌面作りは、これはこれで洗練されているようにも思えます。


メンナク系やゴスロリ雑誌には、ファッション“を”語る言葉が希薄であると言えそうです。
むしろファッション“の”語る言葉があり、その言葉で、ストリートにイメージを招くのです。
それらの雑誌の煽り文は、モデルその人というより、ファッション自体が発した言葉なのです。
つまり、ガイアだとか黒猫のタンゴとかの語彙は、皮膚の上に憑依した霊の語る言葉であって、
それを着ている人間の言葉では必ずしもないのです。ゴスロリ少女はゴスロリに身を包みつつ、
結構、「お母さんに素麺買って来てって頼まれたー☆」とか生活臭のある言葉を吐くものです。
メンナク系のモデルだって、DQNや厨二病は少数派でしょうし、鳥人拳の達人も皆無でしょう。


ゴスロリやメンナク系の想定する世界を、「共同幻想」と言ってしまえばそれまでですが、
現代においても、幻想を作るというのは、最高にクリエイティブな仕事に違いないのです。
今までになかった幻想を作りつつあるという点で、私はそんなファッション誌を応援したいです。
雑誌業界はますます低迷していますが、雑誌“の”語る言葉もまだ大丈夫だと言いたいのです。
posted by 手の鳴る方へ at 23:06| Comment(0) | 批評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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