2009年11月25日

小箱とたん『スケッチブック』

小箱とたん 『スケッチブック』(マッグガーデン)
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高校の美術部が舞台だけど、あるあるネタと昆虫ネタが中心な漫画。
登場人物の自意識の無さはむしろ小学生かと思うくらいだが、高校生。
人間パートは4コマ漫画、猫パートは普通のギャグ漫画という不思議な構成。
数年前にアニメにもなってたようで、今のところ、漫画は6巻まで出ている。


同じ作者の『スコアブック』という、野球漫画の面を被った動物漫画が顕著なのだけど、
(どのページをめくっても野球のアイテムと動物が当たり前のように揃って描かれてる)
動物がしゃしゃり出てくると、この作者は何故か4コマの枠をはみ出してしまうようで、
逆に言えば、そこに出てくる人間達にとっては、4コマが一番居心地いいのかもしれない。
確かに、あるあるネタや昆虫ネタ、変な日本語のネタなんかは4コマあれば足りるワケで、
カミキリムシ限定しりとりなんかでも、8コマあれば相手がキレるのには十分過ぎている。
漫画に出てくる登場人物の青春が、そもそも如何にも4コマ的な断片でできているのがイイ。

「彼らの青春は4コマ漫画みたいでした」って言うと、どういうイメージなのか分かり難い。
恋愛や部活動や学問と格闘することもなく、休憩時間中、ずっと机に伏せているワケでもなく、
モテないことを僻むのでもなく、「何が勉強だ」と嘯くのでもなく、孤独なワケでもなく、
そこそこに同性にも囲まれ、異性にも囲まれ、どうということのない関係を築いていて、
家族や友人や先生といった人間関係に深く悩むのでもないような、そんな「真っ当」な青春。
学校生活を舞台にした4コマ漫画は枚挙に暇ないが、私のイメージはそんな感じだろうか。
このように書くと何も残ってないように思えるけど、もちろんそんなはずはなくて、
そこには物語になり損ねた無数のエピソードが、霧のように不確定なまま漂って残されている。


あっちむいてホイ
だけで
部活の時間が終わった日
帰り際に部活に
うちこむ運動部の姿を
見たときの
なんともいえない気持ちといったら・・・



例えばこういう不毛さは不毛さそのものがエピソードで、不毛でない学校生活なんて嘘です。
『スケッチブック』の美術部は、居心地がいいけど不毛な場所のようで(特に先生には)、
文化系クラブの見せ場のはずの文化祭では、絵を飾りつつその横で焼きそばを作ってたりする。
焼きそばはあんまり売れなかったし、美術部のアイデンティティも丸つぶれのはずなんだけど、
主人公は「部長の作った焼きそばはまぁおいしかった」と、そう独白するだけで後に残さない。
この手応えの無さ、深刻に考えない感じは逆にリアルで、リアルだから4コマ以外では語れない。
霧のような密度のエピソードは、4コマ程度のパッケージでないと逆に拡散して不明瞭になる。
あるあるネタというジャンル自体が、そもそもそういう類のモノのようにも思える。


と、まぁ、いつものように漫画ごときに、見当違いなことを小難しくホザいてますけれども、
私はこの漫画に出てくる根岸という男が大好きなんですよ、要するに。そう、要するに!
この漫画の女性は全員がアンチヒロインな性格で、根岸と彼女らの普通の関係が好きなのです。
『スコアブック』に8ページほど、『スケッチブック』の非4コマな漫画が載っているのだけど、
根岸+女の子三人で、日曜にツチノコ探しに出かけたのに、現場で女の子なんかガン無視して、
全力でツチノコを追うこの男はもうね、素晴らしい。そもそも8ページあるこの漫画のオチ、
最後のコマは、ツチノコに間違えられやすいトカゲの簡単な解説でしれっと終わっていて、
この作者は常道から逸れることを素でやってのけているから、もっとやればいいと思います。


小箱とたん 『スコアブック 小箱とたん作品集』(マッグガーデン)
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posted by 手の鳴る方へ at 05:13| Comment(0) | 批評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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