2010年03月21日

『デモクラシーとは何か』

ロバート・A・ダール 『デモクラシーとは何か』 (中村孝文 訳 岩波書店)
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作者はアメリカの超有名な政治学者。「ポリアーキー」という概念の生みの親でもある。
民主主義研究に成果があり、この本は初心者向けに書かれた平易なデモクラシーの解説書。


民主主義とか共和制とかよく耳にするけど、北朝鮮や中国だって共和国らしいし、
日本国内でも、よく「民主主義オワタ」だとか「民主主義の危機」だとか言われるよね。
ヒトラーを生んだのも民主主義って言うし、そもそも民主主義って何を意味しているの?
この本ではそんな問いに答え、その歴史や種類、利点、必要条件などが解説されている。

民主主義の歴史は2500年に及ぶが、2500年前の民主主義と近代民主主義は大きく異なるし、
同時代の民主主義であっても、国の規模によってその体制にはバリエーションがある。
古代アテネの自由人/奴隷の社会構造を前提とした民主主義はもちろんのことだが、
19世紀以前の民主主義は、基本的には制限選挙下の代表デモクラシーだったと言える。
近現代における文脈で重要となるのは、非制限選挙による民主主義であるワケだから、
理想的なデモクラシーを指す言葉としてポリアーキーという新概念が導入される。
ダールによれば、ポリアーキーの要件は、
@選挙によって選出された公務員
A自由で公正な選挙の頻繁な実施
B表現の自由
C多様な情報源
D集団の自治・自立
E全市民の包括的参画
であるとされる。これで言うと、ファシズムは民主主義から生まれた政体ではあるものの、
それ自体は決して民主主義的では無かったと言える。そもそもダールの説明によれば、
20世紀において、民主主義体制が崩壊し、全体主義へと転落したケースは70を越える。
20世紀は民主主義にとって興亡の世紀、そして最終的に耐え抜いて生き残った世紀なのだ。


多くの政治学者は、寡頭制や君主制にも政治体制としての利点を見ることに吝かではない。
例えばシュンペーターは、フランスの政教分離はナポレオンの強権がなければ無理だった、
民主主義的に決めてたらあんなモンどうにもならねーよマジで、とか言っていたりする。
それでも時代を経るごとに民主主義が広がり、政治倫理と化しているのは、ダールによれば、
民主主義には説明責任があり、人間性を開花させ、国をより繁栄させ、私的自由を保障し、
政治的・本質的な平等を保護し、その他諸々で、ワリのいい「賭け」だからだとされる。

政治学者お墨付きの「賭け」であるけど、「賭け」だから100年に70回ほど負けたりもする。
文民による軍と警察のコントロール、近代的な市場経済の発展による中産階級の勃興、
それに過度に多元的な文化でないこと(つまり有権者にある程度の同質性があること)等、
幾つかのポイントが押さえられていれば、民主主義は興隆し、「賭け」に有利となる。
ここで、有権者の思想・宗教・民族・イデオロギーがバラバラで多元的な文化はヤバイよ、
そもそも民主主義が成立しないよ、と、民主主義の権威が述べていることは注目に値する。
まぁ、その例外として、オランダやスイスやインドに紙面を多く割いてもいるのだけれど。


他にも、民主主義と資本主義は、喧嘩してるけど結婚生活をやめない夫婦みたいなものだ、
資本主義は有権者の生活を豊かにし、諸々の政治活動にとってプラスに働くこともあるが、
その一方で格差を広げ、政治の分配機能を脅かし、アジェンダ設定にも差別が出ると語る。
どうであれ、資本主義は非ポリアーキー体制とは決して相容れないのだと述べている。


こうして見てくると、二一世紀に繰り広げられるかもしれない歴史劇の最後で最大の見せ場は、中国の非民主的な体制が、市場経済の生み出す民主化の流れにどこまで逆らい続けることができるかどうかという点になるだろう。(p.234)


中国が民主化の流れに逆らうのはまだこれから、21世紀の後半からになりそうだが、
個人的には如何にして中国が、ITを駆使してデモクラシーに抗うかにも興味がある。
中間層となった13億人の民主化への志向を、果たしてどこまで制御できるだろうか。
posted by 手の鳴る方へ at 07:51| Comment(0) | 哲学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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