2007年01月10日

シナリオ

ボケノート【Page526】
「夢オチ」「実は嘘でした」を超える最低な映画の結末 (柴川ふみ)


[ 2位 ] 蟹江 (六級)  

ブロロロロロ・・・

ウェザースプーン「ヒャッホーゥ!金だ!札だ!札の海だ!!」
ケビン「あんまりはしゃぐなよ、ウェザースプーン。車が狭くなる」
ウェザースプーン「嫌だねえ、くそ真面目な男は。なあ?ジャニス」
ジャニス「フフフ、そうね、たまには崩れた顔も見てみたいものね」
ケビン「リーダーってのは常に冷静でいるもんだ」
ジャニス「それにしてもすごい量ね、ざっと見積もっても・・」
ウェザースプーン「考えるだけでもワクワクしてきやがる!」
ケビン「そうだな」
ウェザースプーン「こんだけありゃあ、約20万人の子供を救うためのワクチンが買えるぜ!」
ケビン「え?」
ジャニス「そうね、このお金で地球温暖化を防ぐための植林作業もどれだけ行えるかしら」
ケビン「え?え?」
ウェザースプーン「目の不自由な人のための盲導犬も不足してるらしいじゃねえか!」
ケビン「おい、ちょっと」
ジャニス「段差が一つも無い街、なんていうのも夢じゃないわね」
ケビン「・・」
ウェザースプーン「医療技術の発展にも金がかかるって言うしな」
ジャニス「癌が治る病気と呼ばれる日も近いわよ」
ケビン「・・・・・」
ウェザースプーン「いやあ、こんな俺っちにも、できることがあるんだな!なあ!?リーダー!」
ケビン「ああ、一人ひとりの意識が地球を救うんだ」

ブロロロロロ・・・





   明日のために、いま始めよう
       
         A C

      公共広告機構



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久し振りに10点をつけた。
オチ自体は大したこと無くて、ありがちですらあるんだけど、
そこに至るまでのシークエンスが見事。

シナリオ的(映像的)なものを、それっぽく見えるように作るのは結構面倒臭くて、
例えばオチは「ユニクロのフリース 3990円」でも、
「FREEDOM 日清カップヌードル」でもいいんだけど、
どうやってこのオチまで繋げようかと考えたら、途方にくれる。
それを踏まえて、このネタは上手にオチまで持って行っているから高評価。
明日のために何を始めればいいのかさっぱりわからないけれども。


お題が映画(映画のエンディング)、オチは比較的有名なCMという構図。

最初の「ブロロロロロ・・・」で車がフレームイン。
後の「ブロロロロロ・・・」で車がフレームアウト。
物語の立ち上げ、とりわけ、お題に沿った立ち上げ方としては成功している。

で、立ち上げ後、映画的な流れとACのCM的な流れの擦り合わせが始まっている。
この作業は全部会話シーンで成されている。上手いのは「全部会話」って点。
説明的な地の文を一切使わずに、映画的な世界を作り上げている。


>ウェザースプーン「ヒャッホーゥ!金だ!札だ!札の海だ!!」
>ケビン「あんまりはしゃぐなよ、ウェザースプーン。車が狭くなる」
>ウェザースプーン「嫌だねえ、くそ真面目な男は。なあ?ジャニス」
>ジャニス「フフフ、そうね、たまには崩れた顔も見てみたいものね」
>ケビン「リーダーってのは常に冷静でいるもんだ」


たった5行で映画的な世界が立ち上がっていると思う。ここが一番スゴイ。
しかもグッドエンディングっぽい雰囲気も感じられてイイ。どう見ても帰り道だ。
さらに登場人物の性格付けも、これだけで十分な輪郭を帯びている。
車道を走る車、車の中に溢れる札束、愉快なアウトローっぽい三人組。
運転しているのはケビンだろうか。窓の隙間からお札がヒラヒラとこぼれ落ちているはずだ。
何か特定の映画を思い出すわけではないけれど、いかにもありそうなシーンだ。
映画的な文脈を上手に取り込んで、自分なりに表現してる点が高評価。


>ジャニス「それにしてもすごい量ね、ざっと見積もっても・・」
>ウェザースプーン「考えるだけでもワクワクしてきやがる!」
>ケビン「そうだな」
>ウェザースプーン「こんだけありゃあ、約20万人の子供を救うためのワクチンが買えるぜ!」
>ケビン「え?」
>ジャニス「そうね、このお金で地球温暖化を防ぐための植林作業もどれだけ行えるかしら」
>ケビン「え?え?」


で、映画的な世界を作った後で、それを崩すセンテンスを繋げていく。
シレッとした感じで、ウェザースプーンとジャニスはACのCM的な文脈で話し始める。
リーダー格(ということは主人公だろう)のケビンだけが、映画的な文脈に取り残される。
ちなみに、私の中では、「そうだな」のセリフの前後で、ケビンは煙草に火をつけている。


>ウェザースプーン「目の不自由な人のための盲導犬も不足してるらしいじゃねえか!」
>ケビン「おい、ちょっと」
>ジャニス「段差が一つも無い街、なんていうのも夢じゃないわね」
>ケビン「・・」
>ウェザースプーン「医療技術の発展にも金がかかるって言うしな」
>ジャニス「癌が治る病気と呼ばれる日も近いわよ」
>ケビン「・・・・・」
>ウェザースプーン「いやあ、こんな俺っちにも、できることがあるんだな!なあ!?リーダー!」
>ケビン「ああ、一人ひとりの意識が地球を救うんだ」


この部分は上で述べたことの反復になっている。
反復されるCM的なセリフの中で、ケビンがますます置いてけぼりになる。
ちなみに「・・・・・」のところで煙草は揉み消されている。私の中では。
車内は札だらけだが、ここで吸殻を外に放り捨ててはいけない。ACの公共精神に反するからだ。
で、最後、ウェザースプーンから同意を求められて、
>「ああ、一人ひとりの意識が地球を救うんだ」
と、映画世界の住人全員が、CMの文脈に納得したところで、車ごとフレームアウトする。
残されたのは映画の世界(背景)だけで、この世界は侵食してきたCMの世界を既に受け入れている。
ここまでお膳立てすれば、ACのロゴは堂々とこの世界に入ってくることが出来る。

最後まで置いてけぼりなのはスクリーンの前の客だろう。
ダーティー(多分)な映画の顛末がACなのだから、結末としては最低だ。
posted by 手の鳴る方へ at 06:36| Comment(0) | ネット大喜利・小咄板 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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