2007年09月30日

「よつばと!」カレンダー 〜絵の幸福〜

『よつばと!』(あずまきよひこ メディアワークス)の新刊が出てた。
中身の面白さについては、こんなブログを見るより、他のブログを見ればいいと思うよ。

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この手の本には、中に「読者カード」と言う名のマーケティング用のハガキや、
販促用の、何て言うのかは知らんが、二つ折りにされたチラシが挟まっている。
寝転がって読んでると、本の間からバサバサ落ちてきて鬱陶しかったりする。

『よつばと!』7巻に挟まっていたチラシを何気なく見てみると、
「よつばと!」2008年カレンダーなるモノが紹介されていて、
そこにある三枚の、小さなサンプル写真がとても面白かった。
実物はこんな感じ。2007年版で雰囲気も全然違うけど、写真家は同じ。

よつばと!2007年カレンダー

要するに、写真にイラストを描き加えてるカレンダーだ。


写真+イラストという組み合わせは、オサレな広告やTシャツでよく見かける。
ポップアートにも、ここまでイラストじゃないにしても、似たような作品は多分ある。
ほぼ日刊イトイ新聞でも、「福田のフォト絵」というコーナーが常設されているし、
Wikipediaによれば、あの眞鍋かをりの趣味の一つは、写真に絵を描くことだってさ。

ほぼ日の「福田のフォト絵」を見てもらえばわかると思うけれど、
その写真+絵の組み合わせは、写真のコンテクストを文字通り塗り潰して、
その写真の平面上に、別個の、新しい表現を組み立て上げているだけだ。
多くのブログで見ることのできる、写真+絵の組み合わせも似たようなものだ。

それらは面白いかもしれないけれど、写真の表現としては随分とチープに見える。
と言うか、それでは教科書の夏目漱石の写真に眼鏡を書き加えるのと何ら変わらない。
コンテクストを取り替えるだけでは、写真や、その先にある現実は変わらない。


が、「よつばと!」カレンダーの写真+イラストはそうではないと思う。
チラシにある三枚の写真は、どれも写真としては大したことがないのだけど、
(というか、そこはワザとそうしてるのだろうけど、)そんな写真でも、
よつばのイラストが挿入されると、途端に面白くなるから不思議だ。
仮に違う漫画のキャラを挿入しても、何だか不自然なだけだ。私だけだろうか?
さっきから『よつばと!』を知らない人には全く共感されない話をしているのだけど。

ともかく、よつばのイラストを、レイヤー(層)で、基盤の写真と重ねた分だけ、
その写真の世界にきちんと厚みが増しているのはスゴイことだ。
その厚みの正体は何かと言えば、天真爛漫な「よつばのいる(見ている)世界」
ということなのだろうけど、このような写真+イラストの組み合わせで、
ポジティブな効果を生むのは大変で、手近な写真を使って自分で試してみるとよくわかる。


世界の厚みという意味では、写真よりも『よつばと!』本編の方によく言えることで、
ここでダラダラと技法的なことを言っても仕方ないから言わないけれど、
例えば7巻のp.127、コンビニの棚で言えば下から二番目くらいの視点から、
通路の真ん中にいる、カゴを抱えたよつばを正面に撮った構図の絵や、
初めて牛舎で牛と対面したときの、低い位置からのバックショットなんかは、
前後の文脈を無視してそこだけを抜き取っても、十分に面白い絵だと思う。

作者のあずまきよひこは、どこかの何かのインタビュー記事で、
ストーリーは信じていないが、絵の力は信じている、と語っていた。
ストーリーという情報を削ぐ一方で、欠乏した情報を補うかたちで、
背景と、絵を見せるカメラワークに力を注いでいるそうだ。
単純で平凡なコンビニの通路が、だだっ広い牧場が、単なる高層マンションが、
よつばのいるレイヤーをかぶせることで、魅力的な空間へと変貌する。
そこにある世界の厚みこそが、ストーリーの欠如を補う絵の情報、絵の幸福なのだろう。
posted by 手の鳴る方へ at 04:23| Comment(0) | 批評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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